「変な夢を見たんだ。あたり一面が花畑でさ、すごく綺麗だった。なんだか懐かしい感じがした。 よくわからないけど、きっと天国ってああいうところなんだろうな。崩れかけた家が傍にあったから俺はそこに座って待ってたんだ。 誰を、ってお前たちに決まってるだろう。でも待っても待ってもみんなこないんだ。時間に厳しいウォーリアまで来ない。 だから迷ったんじゃないかって俺は探しに行ったんだ。 瓦礫の塔のうえにウォーリアはいた。早く来いと言ったのに、ぐずぐずしてるから、腹が立って塔から突き落としてしまった。 下を見たら、ウォーリアがトマトのように潰れていた。 なんだよ、その顔。夢の話だって。しかたなく俺は他のやつを探しに行くことにした。 最初に見つけたのはティーダだ。あいつは海辺にたたずんでいた。 そして、よくは覚えてないんだが――――――なにか変か?夢なんてそうそうはっきり覚えてるわけないだろう。 まぁ、とにかくよくは覚えてないんだが、俺はティーダを殺してしまったらしい。 足元にはティーダの死体が転がっていたティーダの首には俺の両手の跡があった。だからたぶん俺が殺してしまったんだ。 海が真っ赤になった。赤い海、幻想的だった。水を舐めたんだが塩辛くはなかった。ただ生臭かった。 ひょっとしたら海じゃなくてティーダの血だまりだったのかもしれない。 海沿いに歩くとセシルがいた。蹲っていたから、声をかけて肩を叩いたんだ。 そのままセシルは倒れてしまった。倒れたセシルの腹にはガンブレードが刺さっていた。 俺のものだった。誰が盗ったんだろう。それとも覚えてないだけで俺がセシルを刺したのだろうか。 俺のものだから返してもらおうと思ってガンブレードをとった。 ぎらぎらと、ぬらぬらと、刀身が光っていた。 俺が見つけた場所が本当に天国だったら死んだ奴らはそこにいるかもしれない。そう思って戻ってみたんだが誰もいなかった。 寂しいから花を一本手折った。 でもよく見たらそれは花じゃなくてティナの腕だった。たぶんティナだと思う。赤い服を着てたし、近くに首があった。 首。 そうだよ、首が切れてたんだ。あのいつも俺たちに向けていた可憐な笑顔でなく怒りと悲しみにみちた顔だった。 え――――首の様子?そうだな、すっぱり切れてた。あれは刃物だな。 でもあの細かくギザギザが出来る切断面は知ってる。 ガンブレードで切るときにトリガーを引くとな、振動でああいった傷口になるんだ……………ってことはティナを殺したのも俺か。 覚えてない。夢ってのは記憶がとびとびになるんだな。 ――――なんだその目は。だから夢だと言っているだろう。 なんで俺が実際にそんなことしなきゃいけないんだ。 まぁとにかく俺はティナの首を胴体にくっつけようとしたんだ。そうしてティナの首を眺めていたらオニオンナイトが来た。 なにやら言っていた気がするな。なんだかその辺りから夢はどんどんフワフワしていったんだ。そうして気付いたら俺の手の中にあるのはオニオンの首だった。 子供の頭って小さいんだな。並べて首を置いてみたら姉弟みたいだった。 二人の血を受けた部分の花が、一気に枯れていった。 花が枯れていくのはまるで、伝染病のように花畑全体に伝わっていった。綺麗だった花畑はなくなってしまった。 あとにのこったのはフリオニールだった。フリオニールの死体だった。 フリオニールの体から花は生えていたんだと気付いた。どうしてフリオニールが苗床になったのかわからない。 ただ、フリオニールは肩から腰にかけて深い傷痕があった。ギザギザの傷口だった。 そこに種子がはいって根付いたんだ。血管の中を根が覆っていたよ。 疲れたから、俺は崩れかけた家に入って少し眠った。夢の中でさらに眠るなんておかしなことだ。 起きたら、横にクラウドがいた。おはようと声をかけたのに、返事はなかった。 よく見たら、クラウドは腹の中がからっぽだった。内臓は、クラウドのさらに横に積まれて置いてあった。 あんな綺麗な顔をした男なのに内臓は普通の人間と変わらなかった。てっきりもっと綺麗なものが詰まってるんだと俺は思っていたのに……。 腹が減っていたから、肝臓を一口齧らせてもらった。まずかった。砂のような味がした。 ―――――――お前らを待っていたはずなのにお前らが死んでしまって俺はとても悲しかった。 だがしかしこれでいいという気持ちもあった。よくわからない。 まだお前とバッツに会ってなかったから俺は探しにいった。 バッツを見つけて、バッツが俺になにか言って―――あぁ、そうだ「どうして」って言ってた。 意味がわからなかった。バッツはティナの胴体を抱き締めていた。 「どうしておまえなんでこんなことしたんだ」 バッツが繰り返した。意味がわからなかった。 バッツの言葉はうまく聞き取れなかった。 なにか怒ってるみたいな、悲しんでるみたいな、そばにあるティナとオニオンの首と同じような表情をバッツはしていた。 そこにバッツの首も並べたら面白いかもと思って首を落とした―――――――――――――ところで目が覚めたんだ。 ところどころすごくリアルで変な夢だった。 夢に、お前だけ出てこなかったな、ジタン。 ――――――――どうしたんだ?顔が青いぞ。 …………あれ、なんで俺、血塗れなんだ? ジタン、………………なんでお前、首しかないんだ?」